「桃の節句」のときに出されるお菓子として、「雛あられ(ひなあられ)」があります。ここではこの雛あられを取り上げて、「雛あられの意味はどんなものか」「雛あられの歴史はいつから始まった?」について解説していきます。
女の子の健やかな健康を祈って作られてきた雛あられ
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「雛あられ」は、3月3日のひな祭りのときに作られるものです。女の子が健康に育つようにという願いを込めて出されるもので、長い歴史を持っているものでもあります。
雛あられの色
雛あられは、3色~5色で作られます。どの色数かによって意味は異なってきます。
・3色……花を表す桃色、雪を表す白色、芽を表す緑色で構成されている。なお、雛あられと深く関わる菱餅は、「桃色の花の下には白い雪がまだ降り積もっているが、その雪の大地の下には新芽である緑がある」を意味しています。
・4色……四季を表している。春を表す桃色、夏を表す緑色、秋を表す黄色、冬を表す白色で構成されている
・5色……中国で重んじられている五行説の赤色、黄色、白色、黒色、青色(緑色)で構成されている
「3色に黄色を足して4色に、4色に黒色を足して5色に」となっていますが、色数によってそこに込められている意味がまったく違う点には注目したいものです。
もっとも雛あられには明確に「○色にしなければならない」という決まりはありませんから、好きな色数のものを選ぶとよいでしょう。
また現在は、食味を良くするという目的で、チョコレートでコーディングされた雛あられなども出ています。
雛あられの作り方
雛あられの作り方についても見ていきましょう。
雛あられのもっとも基本的な作り方は、「もち米を、油で揚げて作る」というものです。あげ終わった後のもち米に砂糖(粉糖)と着色料を入れて袋の中で振ることで、色付きの雛あられを作ることができます。
雛あられは季節になればスーパーで売られていますし、通販などで気軽に取り寄せることもできますが、一度は家で作ってみるのも楽しいかもしれません。
ちなみに、このようなもち米を使って作る雛あられは、ポン菓子の一種に分類されます。
また、同じ「雛あられ」であっても、小粒のあられに塩味をつけたお菓子もあります。ポン菓子の雛あられとはまた違った風合いを感じる別物のお菓子ですから、機会があれば食べ比べてみるのもよいでしょう。
雛あられの由来を知ろう~その歴史は古墳時代にまでさかのぼるとも言われている
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ここからは、雛あられの歴史について見ていきましょう。
「何をもって、雛あられのルーツとするか」については見解が分かれるのですが、もっとも古い時代までさかのぼるとすれば、「雛あられのルーツは古墳時代にある」といえます。
この当時はすでに、雛あられの原材料であるもち米を、祝いの席の儀式として使っていたとされています。
ただしこの時代の「雛あられ」は、もちろん現在のものとはまったく異なります。現在の雛あられに近づいてくるのは奈良時代に入ってからで、この時代に、「もち米に火を入れて、神様に捧げる」という考え方ができました。
さらに時代が下った平安時代には、「上巳の節供(じょうしのせっく)」の考え方が日本に伝わりました。これは「桃の節句」とも呼ばれるもので、3月3日のことを指します。もちろんこの上巳の節供をきちんと行えるのは、ごく限られた貴族階級の女性だけでした。彼女たちは、彼女たちの遊び道具であった「人形」と、上巳の節供の考え方を融合させ、やがて「ひな遊び」を確立させていくことになります。このときにふるまわれたお菓子が、現在の「雛あられ」に近いものになった……とする説もあります。
なお、雛祭りの文化が市民にも浸透するのは、江戸時代になってからです。町民文化が花開いたこの時代は、町民も雛祭りを楽しむようになりましたし、より豪奢で精密な人形や小道具が誕生しました。
また、ひな人形には「女の子に降りかかるかもしれない災いを肩代わりしてくれる」という意味が込められているため、この大切でありがたい人形に、美しい景色を見せたいとする考え方も出てきました。このなかで成立したのが、雛人形を持って野山などに足をのばす「ひなの国見せ」の文化です。このときの散策のおともして、持ち運びしやすい雛あられが発展したとする説もあります。
雛あられのだれによって作られたか、どの時代に現在と同じかたちになったのかは、定かではありません。その大元のルーツや発展の歴史をたどることはできますが、明確な「正解」があるわけではないのです。しかしそれでも、雛あられが、雛人形と同様、女の子の健やかな成長を願い、心を込めて手に取られてきたものだということには変わりはありません。
今現在雛人形を飾る風習があるご家庭はもちろん、「今では雛人形を飾ることもなくなったな」というご家庭でも、そのような心に思いをはせて、雛あられを手に取ってみてはいかがでしょうか。
鍋谷萌子
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